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品川政治さん インタビュー

元東京吹奏楽団コンサートマスターで、〈ビュッフェ・クランポン〉の講師として、全国の中学高校生を長年指導してきた品川政治さん。 歌心のある演奏を持ち味に、コンサート、ミュージカルの出演、映画やCMのスタジオ録音、日本大学芸術学部音楽学科での指導など、幅広い分野で人気を集める品川さんに、ご自身の経歴や、吹奏楽部の学生達への想いを語っていただきました。

「人間が好きだから、気持ちを共有できる音楽を生業にしています」

クラリネットを始めたきっかけを教えてください。

 幼少の頃に「ラッシー」という犬の映画を見た時に、オーケストラの音が「すごい!」と思ったのが、最初に音楽を意識した瞬間でした。中学生の時に楽器をやりたくなって、日本大学鶴ケ丘高等学校の音楽科の先生に相談し、クラリネットを薦めてもらいました。その後、同校に入学し、新日本フィルハーモニー交響楽団のクラリネット奏者だった鈴木高通先生に師事しました。とても自由な学校で、作曲をはじめ、才能がある人達が周りに沢山いて、先輩方のいる大学とも繋がっていたのでとても刺激的でした。

プロになりたいと考えたのはいつですか。

 日本大学芸術学部入学時には、プロの演奏家になりたいと考えていました。当時は音というより、「カッコよい」姿に憧れていましたね。入学後は、北爪利世氏、鈴木高通氏に師事し、4年生の時に横川晴児に師事し、そのまま研究所に入りました。

演奏家としてのデビューはいつでしたか。

 大学卒業の時に読売新人演奏会に出てソロデビューしました。ところが、おたふく風邪で熱が40度に上がったため、祝福しにきてくれた友達が誰も近づいてくれなかったので悲しかったです(笑)。その後のヤマハ新人演奏会は、入院していて出られませんでした。
 卒業直後は小編成のオーケストラやミュージカル、録音、テレビのバックの仕事をしたり、ビュッフェ・クランポン・ジャパンの講師の仕事で忙しくなりました。また、先輩方が数人所属していた東京吹奏楽団に所属し、後にコンサートマスターも務めました。当時はとにかく様々な事をやりたいという気持ちでした。

ビュッフェ・クランポン・ジャパンの講師として30年近くの間、吹奏楽部の指導でも活躍されていますね。

 大学卒業後に欧日音楽講座(現:BCJ クラリネット・アカデミー)に参加したのがきっかけです。アカデミーでは全国から上手な人が集まって、講師として来日されたギイ・ドプリュ先生の演奏もすばらしく、本気でプロになりたいという気持ちが高まりました。
 そして、アカデミーで宴会部長をやっていたのが良かったのか、アカデミー終了後に、ビュッフェ・クランポン・ジャパンの当時の社長で作曲家の保良徹さんに誘っていただき、ビュッフェ・クランポン・ジャパンの契約講師になりました。他の契約講師の先生方は大物揃いでしたから、若手の自分は実働部隊だと認識して、全国の楽器店でクラリネットの指導をして回りました。おかげさまで、当時からスケジュールは演奏と講習会で常にぎっしりでしたよ。

東宝ミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」では演奏と役者でマルチな才能を発揮されていますが、どのようなお仕事ですか。

 最初はオーケストラピットの演奏で参加していました。私が現在演じている楽士の役は、もともとクレイジーキャッツの安田伸さんが演じており、私は代役を務めていたのですが、安田さんが末期がんを患われ亡くなられたため、役を引き継ぎました。安田さんの命をかけて演じきった壮絶な姿は、強烈に印象に残っています。
 実際、1500人くらいの前で演じ、2カ月間ほぼ毎日同じ演奏することの大変さを、自分が舞台に上がった時に初めて理解しました。「屋根の上の・・・」は15年ほど続けていますが、3~4シーズン楽士の役をやらせてもらっています。毎回主演や周りの役者さんが助けてくださり、だんだんと自分の成長と達成感を感じることができるようになりました。

「屋根の上のヴァイオリン弾き」のクラリネットソロ(マジカル・サウンズ)

現在はマジカル・サウンズで演奏されていますが、どのようなグループですか。

 マジカル・サウンズは、サクソフォーン奏者の中村均一さんが、アンサンブルができる一番小さい編成の吹奏楽をやろうと言ったのがきっかけで2004年に結成したグループです。私も立ち上げから参加していて、とにかく全員で語り合いながら、楽しく新しいものを作る、というグループです。多くの作曲家が協力し、有名な曲もたくさん作ってくれました。

マジカル・サウンズの活動の、どのような点に魅力を感じていますか。

 マジカル・サウンズには、小編成でどれだけ表現できるか、金管と木管が一緒になってどれだけいい音をだせるか、ということを念頭に置いて作り上げる面白さがあります。サクソフォーン、フルート、クラリネットの木管パートのバランス感も勉強になりました。特に、サクソフォーンは派手なイメージがあり、マジカル・サウンズに入る前は共演を敬遠していましたが、サックスと並ぶと地味だと思い込んでいたクラリネットの、音色の良さ、担う仕事の素晴らしさが実感でき、クラリネットも同じくらい華がある楽器ということがわかりました。
 また、個人的にも、お客さんに楽しんでもらえるツボ、お客さんをひきつけるコツなどのエンターテインメント性を、ミュージカルで学びましたので、それを演出面などに活かすことができ、やりがいを感じています。

「夢への冒険」(マジカル・サウンズ)

さまざまなレパートリーで活躍されていますが、演奏家としての一番のやりがいはどんな時に感じますか。

 自分が演奏しながら心と身体が一致して、音楽にグッときている時に幸せを感じます。メロディーを吹いて感動してもらい、「聞かせられる」ことが醍醐味ですね。若い時には、「悲しい」、「苦しい」、「憤り」などの感情に対してインスピレーションがあり、表現することが好きでした。しかし、役者等の経験を通じて経験を積んだ今は、楽しい音楽のジャンルや、「笑い」「怒り」などの、より幅広い感情を表現できるようになりました。
 演奏家の仕事は、「自分の長所を活かせる場所」で得ることができます。そういった意味では、幅広い分野で演奏できることを嬉しく思いますが、自分はまだ発展途上だと感じるので、苦手なところは今でも一生懸命練習しています。そして、「自分にしかできないこともある」と、確固たる信念をもって活動しています。

教育分野では、ビュッフェ・クランポンの契約講師を皮切りに、埼玉県松伏高校音楽科、埼玉県大宮光陵高校音楽科、名古屋芸術大学、日本大学芸術学部音楽学科、と様々な教育機関で教えられていますね。レッスンで心がけていることがあれば教えてください。

 現在は日本大学芸術学部音楽学科で講師をしています。たくさんの教え子たちがクラリネットで活躍するようになり、私もとても勉強になっています。レッスンで心掛けていることは、一人一人の状況を理解して、「クラリネットをやりたいという気持ち」を持ち続けられる環境をつくり、学生同士が競い合いながらも良い人間関係が築けるように心掛けています。もう一つは、自分自身がいつもクラリネットを大好きでいる姿を、どれだけ学生に見てもらえるかです。

ご多忙のなか、中学校、高校の吹奏楽部で長年指導を続けていらっしゃる理由を教えてください。

 教育活動は、ビュッフェ・クランポン・ジャパンの社長だった保良さんから「全国のクラリネットをやりたいという生徒の上達をサポートしてほしい。楽器販売とは関係のないところで、教育活動を担当してみないか」と言っていただいたことがきっかけで始めました。作曲家でもある保良社長から、私自身も指導を受けながら一緒に全国をまわり、講習会を開きました。
 私は東京吹奏楽団に所属し、コンサートマスターも6年ほど経験しましたが、実は中学高校時代、吹奏楽部に所属していた経験がなかったので、はじめは吹奏楽部の事を良く理解していませんでした。しかしすぐに、吹奏楽部の楽しさに自分が魅了されていきました。そのためレッスンでは、お手本を見せながら生徒さんたちと一緒に練習して、自分もコンクールに出る先輩のような気持ちで上達を手伝うスタンスになりました。このような形で、現在も変わりなく指導を続けています。

WEBサイト「〈ビュッフェ・クランポン〉はじめてのクラリネット」で初心者向け講座を公開したきっかけは?

 最近の中高生吹奏楽部は、部活の練習時間に制限があります。そして、中高の先生方も、楽器演奏は習い初めが肝心なことがわかっているのに、一年生(初心者)の指導には手が回らなくなっています。そこで初心者向けの講座を公開し、サポート出来たらと思いました。
 このレッスン企画は、私が長年ビュッフェ・クランポン・ジャパンの契約講師として講習会やレッスンを行った経験と知識をもとに、可能な限りわかりやすく、沢山の人に楽しんで練習してもらえるように制作しています。初心者は専門の指導を受けることがとても大切ですが、初心者の人から経験者まで、状況に応じたレッスン動画と、伴奏付きの練習曲(4月公開可能)で個人の練習のサポートができたら幸いです。

既に様々な活動を経験されていますが、今後のやりたい活動について教えてください。

 今は70歳まで楽器が吹けるように一生懸命練習しています。今後はジャンルを問わず、心から歌える曲を中心とした演目で、全国各地で演奏会を開きたいですね。ブラームス、フランス音楽、モーツァルト、古い曲、新しい曲。ボサノバや、サラッとしたジャジーな曲にももっと挑戦したいです。
 また、何より若い人たちといて刺激を受けるのが好きですので、自分の知識や経験を活かしてプロアマ問わず若い人たちと新しい挑戦をしていきたいと思います。先輩方との活動、同世代との活動、若い人たちの活動は、どれもとても大切です。私は人間が好きだから、気持ちを共有できる音楽を生業にしています。これからも様々な活動をとおして、新しい出会いがあることが楽しみです。

品川政治さん プロフィール

日本大学芸術学部非常勤講師、マジカル・サウンズ奏者、元東京吹奏楽団コンサートマスター

 日本大学鶴ヶ丘高等学校音楽科、日本大芸術学部音楽学科及び同研究所修了。クラリネットを(故)北爪利世、鈴木高通、横川晴児の各氏に師事。1987年読売新人演奏会にてソロデビュー。1996年田園ホール・エローラにてソロリサイタルを開く。1997年キングレコード社よりソロ・アルバム『セレナーデ』を発売。2005年マジカル・サウンズのファースト・アルバムがブレーン社より発売され、好評を博している。
 近年では東宝ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』に演奏だけではなく役者としても出演し、そのマルチな才能ぶりを発揮している。またマジカル・サウンズのメンバーとしても活躍している。また、日本大学芸術学部非常勤講師として後進の指導にあたる傍ら、株式会社 ビュッフェ・クランポン・ジャパン専任講師として全国の中・高等学校の吹奏楽の指導にも力を入れており、その熱心な指導には各方面より絶大な信頼を得ている。

使用楽器:B♭管 〈ビュッフェ・クランポン〉レジェンド、A管 〈ビュッフェ・クランポン〉トラディション、プレスティージュ、E♭管 〈ビュッフェ・クランポン〉トスカ

所在地

〒135-0016 東京都江東区東陽4丁目8−17

アクセス:
東京メトロ東西線「東陽町」駅1番・5番出口より徒歩約3 分

コンタクト

電話 : 03-5632-5511

 

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